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企業にとって一番重要なアセットは顧客です。顧客を満足させるには、価値を提供しなくてはいけません。
事業のさまざまな要素が顧客にどのような価値を提供するのかを理解することは、チームがより効率的なプロセスを構築するのに役立ちます。事業プロセスの各要素がどのような形で最終顧客に価値を提供するかを把握することを、バリューストリームといいます。
バリューストリームとは、顧客がプロダクトやサービスを必要としてからそれを受け取るまでの間に起こるすべてのイベントのことです。この概念は元々リーン生産方式の一環として確立されたもので、チームや企業は、プロセスの可視化にバリューストリームを利用して、生産工程を効率化するための機会を特定します。
バリューストリームを使って事業プロセスを分析する際の最終目標は、プロセスを効率化し、無駄を省いてリードタイムを短縮することです。顧客のことを常に第一に考え、顧客に可能な限り最短で価値を提供することで、顧客の満足度を高めることにつながります。
ビジネスバリューストリームとバリューストリームマッピングの違いを理解しておくことは重要です。ビジネスバリューストリームとは、顧客がプロダクトやサービスを必要としてからそれを受け取るまでの実際のプロセスのことです。一方、バリューストリームマッピングとは、その実際のプロセスを視覚的に表現したものです。
バリューストリームマッピングとは、簡単に言えば、バリューストリームの可視化表現です。バリューストリームマップは、マッピングツールを用いて手軽に作成することができます。
バリューストリームには、大きく分けて 2 つの種類があります。
運用バリューストリームは、最終顧客に価値を提供するために必要なアクションやステップのことです。このタイプのバリューストリームは事業プロセスのコアとなる部分であり、たとえば、エンドユーザーに最終的なプロダクトやサービスを提供するまでのフローのことです。
開発バリューストリームは、運用バリューストリームを生み出すために、バックグランドで行われるプロセスのことです。新しいプロダクトやサービスの開発に必要なすべてのステップに着目するバリューストリームです。
バリューストリームの概念は、トヨタ生産方式 (TPS) とリーン生産方式に深く根ざしています。ここでは、その歴史的背景と基本原則を解説します。
トヨタ生産方式は、1950 年代にトヨタ自動車の大野耐一氏らが確立した生産管理手法です。顧客に価値を届けるまでの流れ (価値の流れ) を可視化し、無駄を徹底的に排除する考え方を体系化しました。
この手法は後に「リーン生産方式」として欧米に広まり、製造業だけでなくサービス業やソフトウェア開発にも応用されるようになりました。
リーン生産方式では、バリューストリーム上の非付加価値活動を「7 つの無駄」として分類します。
過剰生産: 必要以上に作りすぎること
待ち時間 (待機時間): 次の工程を待つ間のアイドル状態
輸送: 不必要な材料や製品の移動
過剰加工: 顧客が求めていない付加価値のない加工
在庫: 必要以上の仕掛品や完成品の保持
動作: 作業者の不必要な動き
不良品: 手直しや廃棄が必要な欠陥品の発生
バリューストリームマッピングを行う際は、これらの無駄を特定し、排除または最小化することが継続的改善の出発点となります。リーンプロジェクト管理の詳細については、関連記事をご覧ください。
バリューストリームを理解する一番よい方法は、実際の例を見ることです。バリューストリームの一例として、ホテルのチェックインプロセスを見てみましょう。
以下は、ホテルの予約からチェックインまでの流れです。
ホテルの予約
顧客の到着
チェックイン手続き
部屋の割り当て
顧客が部屋に入る
上記の例にはわずか 5 つのステップしかありませんが、実際のバリューストリームでは、もっと多くのステップが含まれるのが普通です。バリューストリームの目的は、このような一連のステップをすべて洗い出して可視化し、どこに無駄があるか、どこを改善できるかを明らかにすることです。
Asana でワークフローの可視化と構築を行うバリューストリームマッピング (VSM) は、プロセス全体を視覚的に把握し、ボトルネックや無駄を特定するための手法です。以下のステップに沿って進めます。
改善対象とする製品やサービスのバリューストリームを選びます。顧客への価値提供に直結し、改善のインパクトが大きいプロセスを優先しましょう。
現在の業務フローをそのまま可視化します。各工程 (プロセスステップ) を記録し、以下の情報を収集します。
各工程のサイクルタイム
工程間の待ち時間 (待機時間)
仕掛品 (WIP) の量
担当者やシステムの情報
バリューストリームマップでは、標準的な記号を使って情報の流れ、材料の流れ、タイムラインを表現します。プロセスの可視化にはフローチャートも活用できます。
各工程を「付加価値活動」と「非付加価値活動」に分類します。顧客が対価を支払う価値を直接生み出す活動が付加価値活動です。それ以外はすべて非付加価値活動 (ムダ) となります。
タイムライン上でリードタイムが長い箇所、待ち時間が集中する箇所、ダウンタイムが発生する箇所を特定します。これらがプロセス改善の優先対象となります。
ボトルネックを解消し、非付加価値活動を削減した理想的なプロセスフローを設計します。リードタイムの短縮目標やスループットの向上目標を数値で設定しましょう。
将来状態に近づくための施策を優先度順に実行し、KPI をモニタリングしながら継続的改善を進めます。業務改善の具体的な進め方については、関連記事も参考にしてください。
バリューストリームの健全性を測定し、改善の成果を追跡するためには、適切なメトリクス (指標) を設定する必要があります。以下は代表的な KPI です。
顧客の要求が発生してから、価値が届けられるまでの総所要時間を指します。待ち時間や承認プロセスを含む端から端までの時間です。リードタイムが短いほど、顧客への価値提供が迅速であることを意味します。
1 つの工程が 1 単位のアウトプットを完了するまでにかかる時間です。リードタイムとは異なり、待機時間を含まない実作業時間を測定します。
一定期間にバリューストリームを通過するアウトプットの量です。生産性やキャパシティの指標として活用できます。
リードタイム全体に占める付加価値活動時間の割合 (パーセンテージ) です。フロー効率が低い場合、待ち時間やダウンタイムが多いことを示します。
計算式: フロー効率 = (付加価値活動時間 / リードタイム) x 100
バリューストリーム上で同時に処理されている作業の数です。WIP が多すぎるとボトルネックや待ち時間の増加につながります。
これらのメトリクスを継続的に計測し、改善前後で比較することで、プロセス改善の効果を客観的に評価できます。
バリューストリームの概念は製造業に端を発しますが、現在ではソフトウェア開発や IT 運用の領域でも広く活用されています。
ソフトウェア開発においては、アイデアの発案からコードの本番デプロイ、顧客へのリリースまでがバリューストリームとなります。
各工程 (要件定義、設計、開発、テスト、デプロイ、運用) のリードタイムやサイクルタイムを可視化することで、開発プロセスのボトルネックを特定できます。
DevOps は、開発 (Dev) と運用 (Ops) を統合し、ソフトウェアのバリューストリーム全体を最適化するアプローチです。バリューストリームマネジメント (VSM) ツールを用いることで、CI/CD パイプラインの各段階における待ち時間やフロー効率をリアルタイムに測定できます。
アジャイル開発のスプリントやカンバンボードは、バリューストリームの一部を可視化する手段と捉えられます。アジャイルチームがバリューストリーム全体を意識することで、チーム単位の最適化にとどまらず、顧客価値のエンドツーエンドでのフロー改善が可能になります。
バリューストリーム分析を行うと、以下のようなメリットがあります。
無駄の削減: プロセスを可視化することで、非効率なステップや不要なステップを特定し、排除できます。
リードタイムの短縮: 無駄を省くことで、顧客に価値を提供するまでの時間を短縮できます。
チームの連携強化: バリューストリームマップをチームで共有することで、全員がプロセス全体を理解し、部門を超えたコラボレーションが促進されます。
バリューストリームは、戦略計画にも活用できます。以下の 3 つの方法で、バリューストリームを戦略計画に組み込むことができます。
ポートフォリオの優先順位付け: バリューストリームを使って、どのプロダクトやサービスが顧客に最も大きな価値を提供しているかを特定し、リソースの配分を最適化できます。
継続的改善の推進: バリューストリームマップを定期的に更新することで、新たな改善機会を発見し、プロセスを継続的に改善できます。
組織全体の整合性: バリューストリームを組織全体で共有することで、チーム間の整合性を高め、共通の目標に向かって取り組むことができます。OKR を活用して目標を設定し、バリューストリームの改善と連動させることも効果的です。
バリューストリームを理解し、活用することは、事業プロセスを改善し、顧客により多くの価値を提供するための重要なステップです。バリューストリームマッピングを使って、プロセスを可視化し、無駄を特定し、効率化の機会を見つけましょう。
バリューストリームの管理と最適化を効率的に進めるには、チーム全体でプロセスを可視化し、タスクの流れを一元管理できるツールの活用が効果的です。ワークフローの構築についても、あわせてご確認ください。
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